心にきく、無意識さんとの旅

「人間」と言う生き物

「心よ、私を助けてくれますか?」
「はい。もちろん。」

 

*

”ある生活必需品がなくなる”・・・と言うデマを流した発信元が分かって、
ひどく炎上しているらしいことを教えてくれたのは
夫だった。

 

人の激しい感情が行き交う場所や情報には
普段から敢えて一定の距離を置くようにしているので
普段だったら「スルー」していたであろうその情報。

 

それが、どうにも無視できなくなったのは、
おそらく彼がこう付け足したからだと思う。

 

「その人、どうやら、カメラやってる人みたいだぞ・・・」

 

純粋に気になってしまった。
同じ、写真を生業にするものとして。

どんな写真を撮る人なんだろう?
そんな好奇心の誘惑に抗えず、
次の瞬間には、スマホで検索をかけていた。

 

すると・・・
あっけないほど簡単に、検索していたSNSのページは見つかった。

 

 

人を、撮るのか・・・
人が、好きなのかな・・・

 

世間の喧噪がまる虚構のような別世界が
1コマ、1コマには閉じ込められている。

 

ふと、コメント欄に目が行く。

 

「あ・・・」

 

思わず、言葉を飲み込んで、
身がすくんだ。

 

そこに書かれてある文字を追う。

 

まるで礫や刃が一斉に
360度からばらばらと向かって来るような・・・
痛くて、怖くて、
どうしようもなくなって
その場を去った。

 

同じ日の夜のこと。

 

Twitterを見ていた時だった。

 

「自殺をしようと思います。
最後に皆さんの幸せを感じる出来事を教えてください。
最後くらいは幸せな気持ちを感じたいです。
読み終えてから(自殺を)決行します。」

 

確か、こんなような内容だったと思う。
名前は仮名だったし、どこの誰とも分からないけれど
何万件と言うコメントが入っているツイートが
ぽんと目の前に現れた。

 

そこには、不特定多数の人からの
「幸せを感じること」が書かれてあり、
同時に「死なないでくれ」と言う趣旨のコメントが
怒涛のように連なっていた。

 

どこの誰とも分からない人の一言に、
穿った見方をすれば、
それこそが「本当」かどうか分からないつぶやきに対して、
皆が本気で「死ぬな!」と呼びかけている。
「生きて!」と声を張り上げている。

 

不協和音のように
昼間の出来事がフラッシュバックしてきた。
そうこうしているうち、
なんだか・・・
どっと疲れた。
ただ、疲れた。

 

けれども、思った。

 

これが「人間」なんだ、と。
良い子ぶるつもりなんてさらさらない。
私も同じその「人間」なのだから。

 

 

世界には、満足に食事が食べられず、
今、この瞬間にだって
飢えで命を落として行く人がいる。

 

「余っているところから、足りないところに分けられたら、
一瞬で世界の飢餓問題なんてなくなるんじゃないかな?」

 

そう思っていた頃の自分が
どれだけ傲慢で高慢だったのかを思い知った。

 

自分だけは、十分に得て、安全地帯に居て、
その上で、だから「余り」を分けてあげる・・・
それこそが解決法だなんて、
恥も知らずに考えていたんだから。

 

自分のような考えの人間が、
きっと一番世界の「不均衡」や
「飢餓」を助長しているんだと思った。

 

今、本当の意味で必要な「分かち合い」と言うのは
仮に「自分は十分ではない」かも知れないけれど、
「きっと、後々大丈夫であるはず」と言う、
人間同士の「基本的信頼感」を基盤に、
「安心感」に満ちた状態から
「よかったら、ひとつどうぞ」と手を差し伸べられる
本物の「強さ」のことなのに。

 

翌日、朝、
たまたまゴミを捨てに行ったところで
お隣さんに会った。

 

普段は、挨拶もそこそこに、
「それではまた・・」と失礼する間柄。

 

でも、この日、思い切って言ってみた。

 

「生活必需品の在庫大丈夫ですか?
もし、本当に困ったときは
声かけてくださいね。
我が家は二人暮らしなので、
若干の余裕があるとは思います。
お分け出来ると思いますので。」

 

お隣さんは、

 

「ありがとうございます。
今のところ大丈夫です」

 

とにっこり笑った。

 

なんだか、嬉しかった。
そしてほっとした。
お隣さんが元気だったことが。
足りないと言う「恐怖」から、
一歩でも半歩でも、踏み出せたことが。

そして、自分が本当に欲しかったものを
自分の内側に取り戻せたことが。

 

誰のことも
今、責める気にもならないし、
責めていても何も変わらない。

 

ひとり、ひとりが
今こそ、本当に「欲しい」と切望しているもの。

 

それは、目に見えるものではなく、
お金で買えるものであろうはずもなく、
必ず、この瞬間も、
ありとあらゆる場所に、
溢れんばかりに存在している。

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