二輪草が咲いたよ、そう今ひとり
(にりんそうがさいたよ、そう、いま、ひとり)
花が咲いたことを
告げ知らせずにはいられない。
そんな衝動を
あなたは感じたことはありますか?
二輪草は晩春の季語。
台のような葉の上に細い茎を伸ばし、
二輪の花をつける特徴があります。
花の開花を知らせようとしたのは女性。
彼女には決まったパートナーがいます。
「ねえ、二輪草が咲いてる!」
そう電話越しに告げると、
連絡を受けたその男(ひと)は、
「こんな時間に電話なんて珍しいね。
いま、ひとり?アイツは?大丈夫?」
と彼女の環境を気にかけます。
「そう今ひとり・・・」
彼に返事をした後、
彼女はふたたび黙り込み、
咲いたばかりの二輪草に
視線を落とすのでした。
本当はここに居て欲しい
電話の向こう側に居る
その人を思いながら・・・。