二輪草

二輪草が咲いたよ、そう今ひとり
(にりんそうがさいたよ、そう、いま、ひとり)

 

花が咲いたことを
告げ知らせずにはいられない。
そんな衝動を
あなたは感じたことはありますか?

二輪草は晩春の季語。
台のような葉の上に細い茎を伸ばし、
二輪の花をつける特徴があります。

花の開花を知らせようとしたのは女性。
彼女には決まったパートナーがいます。

「ねえ、二輪草が咲いてる!」

そう電話越しに告げると、
連絡を受けたその男(ひと)は、

「こんな時間に電話なんて珍しいね。
いま、ひとり?アイツは?大丈夫?」

と彼女の環境を気にかけます。

「そう今ひとり・・・」

彼に返事をした後、
彼女はふたたび黙り込み、
咲いたばかりの二輪草に
視線を落とすのでした。

本当はここに居て欲しい
電話の向こう側に居る
その人を思いながら・・・。

About The Author

miu
「詠むように撮り、読むように観る」をモットーに、
書く・撮る・読む・詠むを通じて、
季節やことば、そして内なる叡智とつながり、
森羅万象を思索しております。
あなたにとっても、
この場がその一助となれば幸いです。

Archive List